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文系はコストパフォーマンス悪いですよ。

グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち―シナリオ対訳

グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち―シナリオ対訳

から。


登場人物;
ウィル(マサチューセッツ工科大で夜間掃除のバイト。学校は行ってない。ほんとは数学の天才。)
クラーク(ハーバード大の学生)


飲み屋で、ハーバードの学生の振りをしたウィルの友達の正体を暴くことで女の子に自分を顕示しようとするクラーク。追い詰められる友達。飽きてきたウィルは会話に割って入る。

クラーク:(ウィルの友達に)ただ、植民地時代初期における市場経済の発展について、君の見識を聞かせて欲しいと思っただけなんだ。僕の見解は、革命戦争以前、特に南部の植民地における経済様式は、前資本主義的農業経済としての特徴に当てはまり・・・


ウィル:(割って入って)もちろん、それは君の見解さ。大学院の1年だもんな。君は、マルクス主義歴史学者の本を何冊か読んだばかりなんだ、たぶんピート・ギャリソンとか。だから今はそう言ってるけど、来月になってジェイムス・レモンにたどり着いたら、バージニアペンシルバニアは、1740年にはすでに強力に資本主義的で企業家的特長があったって言い始める。それが、2年まで続いて、そのあとはゴードン・ウッドの革命前とユートピアと軍隊組織の資本形成効果を丸暗記して、ここで吐き出す。


クラーク:(不意をつかれて)あの、つまり、僕はそうじゃなくて、ウッドはあまりにも影響を過小評価して・・・


ウィル:・・ウッドはあまりにも富、特に私有財産に基礎を置いた階級差の影響を過小評価している・・・ビッカーズの「エセックス郡の考察」から引用したんだ。98ページから102ページ、何だよテーマについて自分自身の考えがないのか、それともただ、本を全部暗唱するつもりだったわけ?



呆然とするクラーク


ウィル:いいか、この女の子たちの気をひくために、おれの友達をだしにして、知ったかぶりをするんじゃない。



クラークは、優雅に逃げ出せる方法、あらゆる出口を探して迷っている。


ウィル:悲しいことに、あと50年して、お前がやっと自分で考え始める時に気づくのは、人生に確実なことは2つしかないってことだ。


クラーク:そう?何だい?


ウィル:ひとつ、人の文章を盗むな。ふたつ、公立図書館の延滞料1ドル50セントでまかなえたはずの教育に、15万もかけたってことさ。


クラーク:だが、僕は学位をとり、君は僕の子供たちにフライドポテトを売る、スキー旅行に行く途中のドライブスルーでね。


ウィル:(にっこりして)たぶんな。でも、少なくとも自分で考えてるさ。

この映画の脚本(&主演)の一人、マッド・デイモンはハーバード在籍中にこの話を書き始めたらしい(その後中退したみたい)。


前、文系教授の恐ろしさでも書いたけれど、
4年、ただ授業に出てるだけじゃ(学ばなければいけない総量に対して)何も得られないに等しい文系。


研究室単位で就職を斡旋している理系に比べて、
就職斡旋能力が皆無の文系。


(国立は特に)理系と学費の差がないのに、
実験機材が豪華な理系に比べて、
1ドル50セントでまかなえてしまう文系。


卒業してすぐ社会の即戦力になる理系と、
気が遠くなるほどの量の本を読んで、
50年たってやっと自分の頭で考える余地が見つけられる文系。


それでも、私は文系で楽しかったと思うけれども、

でも、世の中的には、
結局のところ教養なんて、
理系の大学行きながら家で本読めばいいんじゃん?1ドル50セントだし。


という話に落ち着いたのだと思う。


内田先生が仏文科の衰退を嘆いていらっしゃったけれど
本気の仏文マニアか、
もしくは卒業しても、ブランド物で身を包み、JJの読者モデルとして肩書きに平気で「家事手伝い」と書いて微笑んでいられる世界の人か、
どちらか以外に、この道を選択するのは難しい。
どう考えても、コストパフォーマンスが悪すぎる。


それでも、生身の教授たちという
恐ろしく深い生の知に少しでも触れられたことは、
というか、そういう恐れを早いうちに持てたことは、
何かの宝なのだろうし、


たとえば、私がこれから遅ればせながら理系の何かを学ぶとしても、
ああ人生この順番でよかったわ、と、少なくとも私は、思ったりなんかするんだと思う。


ウィルじゃない、凡人だから、
15万ドル(はしないけどぜんぜん)かけなかったら、
もっと、壊滅的にどうしようもなかった、気もするし。


世の中って、
これ勉強して何になるの、じゃなくて、
勉強したこれで何やろう、だし。


そこらへんの、覚悟があれば、今の時代だって文系お薦めです。
(とりあえず死にはしない。)