夢を叶える夢を見た
目標を決めて、それを叶えるために人生を送る人がいる。
それをこそ人生と、名づけて生きる人がいる。
私はずいぶん前に、そう見えていた世界を外れてしまったけれど、
本当は演じる役割をこの今の生で、
はっきりと与えられている実感があるほうが「充実」するのだろうと憧れはする。
未だに少しは。
夢なあ。特にないなあ。なんだかなあ、と思ってたころ出た本。
ふと買った。まだ本棚にあったことに昨日気づいて今読み返しながら打ってる。
悲しい題名と、情熱の赤。
- 作者: 内館牧子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2002/12
- メディア: 単行本
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内館さんが3年にわたって「夢」に向かって「飛んだ」人、「飛ばなかった」人、
両方の人たちを取材した本。
「夢」に向かって「飛び出す」時、人は誰も揺れる。揺れない人もいる。
留まる人、飛ぶ人。留まった人のその後、飛んだ人のその後。
そんなことが書かれている。
これは「何とか人生を変えたい」、「このままでは生まれてきた甲斐がない」、「今の仕事を辞め、新しい世界に飛ぼうか、飛ぶまいか」と悩んでいる男女に送るリポートである。
まえがき
この本の初版が2002年。私が買った第2刷が2003年。
あの頃はそうだなあ、やっと社会になじんで、ただ、かろうじての社会人で、人並みになにか、
まともになったほうがいいのではないかしらと、
そういう社会的な文脈で自分に「何か」を規定しようと、
それでもあがいていた。
しかし手に取ってそして買った本がこれでよかったのか当時の私w
まあこの本はリアルである。
今の本屋の自己啓発コーナーを賑わすスピリチュアルでフリーダムなイメージはない。
満足もリアルなら、後悔もリアルである。
人の成功譚は普通他の人には役に立たない。
その人の引き寄せた運とタイミングが一番肝だからだ。
誰にでも運やタイミングはある。
私はそう思う。
すべての人に「使命」があるかどうかは知らないが、
「流れ」はあると思う。
私は、自分の「やりたいこと」を自分で決定することを放棄した。
この本を読んでからは結構後だ。
夢探しゲームも、夢叶えゲームも参加を止めた。
流れがあるのだから、それに乗ること。
自分の意志よりはそれを、優先している。最近は。
もし自分に何か「欲望」が現れることが今後あるのなら、それはそういう「流れ」なんだろうと。
世間は、まあ、最初から乗り遅れてるから、いいや。
私は弱いので、
まあそれ以外に、生きていきようがないだけとも言えるけれど。
普通の人はでも、もっときちんと「意志」がある。
「やりたいこと」もあるし「思い描く成功」もある。
流れに逆らってでも、切実な。
ある「飛んだ人」の話。
「生きていく上で、流れというものがあるでしょう。それに逆らったり、逆らわなかったり。退職は逆らうことなんですけど、逆に自分の気持ちには逆らっていなかった。僕は気持の流れに乗ろうと思いました」
おそらく、誰しも二本の流れを持っているのだと、安(引用者注:人名)の言葉で気づいた。一本は「今、乗っている流れ」である。昨日、今日、明日と続く流れだ。そしてもう一本は、「自分の気持」という流れである。それは「今、乗っている流れ」と時に激突する。その時はどちらか一方に乗って生きなければならない。激突する二本の流れに同時には乗れないのだ。それが「飛ぶ」「飛ばない」という選択だろうと思う。
第二章 飛んだ人 p.113
あれ。今これの飛ばないほうの人を私、といおうと思ったけれど、違うようだ。
私だったら「意志の流れ」があるのならそちらを確実に優先するなあ。
ないからやらないけど。
うーん。わかんなくなった。
「自分の気持」という流れか。その辺か。
私は、あまり社会的に定義されたような「成功」に
憧れるという気持ちがない。
世間のイメージ操作によって与えられた成功の定義を自らの欲望として内面化してそれを叶えることに主体的な生としての意義を感じない、
という言い方をすればそれっぽいけどそれほど強いあれでもない。
なんだかなあ、と思うくらいだ。
ただ、自分に自然に情熱が起こって、そしてそれが自分の努力なりによって叶えられたなら
それがどんなにくだらなくても、素敵な人生だなあと思う。
そんな程度。
ああ、それが「夢」なのかなw
私も結局未だに、「夢を叶える夢」を見ているのだな。
そして逃れられない。
オリンピックの季節になると痛切に感じる。もやもやを。
金メダルに賭ける人生。壮大で壮絶な賭け。
あの目標は社会に「作られて」いるのか、それとも。あるいは。
この本は当時までのインタビュー。
その先も彼らの人生は続いている。
この本にある誰の「成功」もそして「後悔」も、
その人の「人生の結果」では、ない。
他人の成功譚から一般化も法則の作成も出来ない、私はそう思うけれど、
でも切実に生きている人のルポは、怠惰な私には必要な情報、
だったのだろうなあ。
もちろん、そもそも「夢のない」人へのアドバイスはなかったけれども(笑)。
あの頃の私はほら、それでも「夢はあるはずだ」と、思っていたから。
先日、知り合いの、60代の人の自費出版の本を一冊もらった。
日記みたいな本。その人の、転職の日々の話。
最初の就職先から、いろんな人の固有名詞、特徴、あだ名、
そういう本筋に関係のない、読んでいる人に対しての雑情報にまみれ、
それなのに肝心の文章は、ひねりもなく、事実が飾られてもいなかった。
そういう、ブログとはまた違った、自費出版でしかありえないような本。
何度も転職をし、最後には奥さんに離婚され、娘さんに愛想をつかされていた。
自伝だから、オチがない。オチというよりは、リアルに落ちていた・・。
それなりにやりがいがあり、そして悲しい思いをしたことが多かった人生のようだった。
本人の側からしか書いていないから、そして本人も分かっていないから、
何が「間違えた」のかわからなかった。
本人もそう書いて筆を置いていた。
これを読んで、何か思うことのある人がいたら、そうならないようにと。
彼は思っているようだった。
せっかくの自費出版に、何一つ過去を美化することのなかった、彼の人生は続いている。
今も。
多分今が一番いいと思う。あの人は。
この本を書けたあの人は。