善き人よ、『それでもなお、人を愛しなさい』
愛読してる極東ブログで先日この本が紹介されていた。
ちょっと思うところがあってその場で購入した。
それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条
- 作者: ケント・M.キース,Kent M. Keith,大内博
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/08
- メディア: 単行本
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こんな感じ。
1. People are illogical, unreasonable, and self-centered. Love them anyway.
2. If you do good, people will accuse you of selfish, ulterior motives. Do good anyway.
3. If you are successful, you will win false friends and true enemies. Succeed anyway.
4. The good you do today, will be forgotten tomorrow. Do good anyway.
5. Honesty and frankness make you vulnerable. Be honest and frank anyway.
6. The biggest men and women with the biggest ideas can be shot down by the smallest men and women with the smallest minds. Think big anyway.
7. People favor underdogs, but follow only top dogs. Fight for a few underdogs anyway.
8. What you spend years building may be destroyed overnight. Build anyway.
9. People really need help, but may attack you if you do help them. Help people anyway.
10. Give the world the best you have and you’ll get kicked in the teeth. Give the world the best you have anyway.
一応本家見に行ったら”Copyright Kent M. Keith 1968, renewed 2001”としっかり付記されているんだけど、もうWikipediaを始め世界中でコピペされまくってるので、売るんでもなきゃコピペしてよかでしょう、と思いましてコピペ。
で、訳は?ということになるんだけど、そこが、私が引っかかったところだった。
たとえば第1条。
- 1. People are illogical, unreasonable, and self-centered. Love them anyway.
特徴的なのは、”anyway”をどう訳すかだ。
私は、finalventさんの選んだ接続詞が好きだった。「それはそれとして」のほう。
実は、私は最初この十戒を見たとき、なぜこれが”逆説”と呼ばれるのか分からなかった。普通に順接じゃない?と思った。
だってたとえば逆に、「人間なんて論理的でもなきゃ理性的でもなくてあげくに自己中、だから愛さない。」
そういう人ってそんなにいるだろうか?
そんなことが愛す愛さないにそもそも関係あったっけ??
そりゃ相手が理屈が通じて思いやりがあったほうが好ましくはあるけれどうーんなんかなあ・・・。
と、はてなマークがたくさんついた。
だから、せめて、「それはそれとして」だろうなあと。まあ世の中所詮馬鹿ばっか(もちろんお互い様)だし無理解だし頭にきてばっかりだけど、それはそれとして愛すじゃん当然、というなら分かるなあと。
まずざっと見て、そう感じた。
で、なぜ訳書が「それでもなお」なんだろうと思って買った。
一つ一つに関わる深いエピソードがあるなら知りたくて。
で読んで分かった。ああ、この本は善き人の為の本だ。
この逆説の十戒がこうやって出版されることになった経緯は極東ブログでfinalventさんが取り上げられているのでそちらを先に読んでもらえたらと思う。それとfinalventさんの全部の訳。⇒参照
この著者、キースさんはこの10か条を、ハーバード大学2年、19歳の時に、高校の自治活動をしているリーダー達のために書いたそう。そして彼自身も、高校の時、公の意識を持ち、生徒会として活動していた。これは、彼の経験から、後輩達へ向けて贈られた言葉だった。
私はこの出だしで、大学時代の友人を思い出した。小学校は忘れたけど、確か中高は生徒会長だと言っていたかな。小学校もかな。
強い公の心を持った彼の人生は、私みたいな人間にいつも悩まされていた。そう、わがままで、規律に従わなくて、斜に構えてにやにやしてみせるだけで行動せず、訴えかければめんどくさがり、良いことをすれば胡散臭がり、面倒なことはお任せ、困ったことがある時だけどうなってんだと憤る、お膳立てを当然として喰い尽くし、後片付けを押し付けて次の遊びに去っていく、そんな無神経で自己中な、「一般の生徒」に。
「お前は何かの長になるようなことだけ上手くすり抜けていくな」と中学の担任を感心させたことのある私は、本当はそういう器が全くないことを知っていただけで、そういう重責を引き受けるほかの友達を、本当は尊敬していた。まあ若干、「何の徳にもならないことをよくやるなあ」という、何か違う人種を見る思いもあった。
私は、彼のような人間に説教をされるのが好きだった。私には根拠が分からない、その公の心。話しても話しても尽きない彼らの理想。聞いても聞いても分からない彼らのその思いの源。騙されているわけでもない。洗脳されているわけでもない。自分のためでもなければ自己欺瞞でもない。ただ単に、彼らは深いところから、何にも寄らず誠実だった。
ああ善き人がここにいる。
すげえなあ。
私は彼らの受難をよそに、いや、受難そのものですらある自分をよそに、自らを省みもせずに、ただ善き人の話を聞いていた。
彼らの希望や、絶望を。
他人事のように。
そう、私は、anyway、まあしょうがない、そうやって愛を、与えられる側の人間だった。
相手の良心につけこみ、相手の慈悲にすがる。
相手の忍耐に甘え、相手の諦めを待つ。
相手の笑顔が、無理をしているのが分かる。
好き好んでやってんでしょでも?いいんじゃない?
たまにちょっと罪悪感を感じて、軽くフォローする。
そんな程度の人間。
ただ、最低限の節操はある。自分もどうしようもなくて愛されているのが分かるから、
自分もされて当然と思うことは、他人にもしかりである。
自分が受けた寛容は、出来るだけ同じものを他人に示そうと思う。まあそんくらいは当然でしょ。
…だから、逆説が分からなかったのだ、私には。
そんなの当然順接だと思って、主体ではなく、目的格に陣取って、甘えて生きているから。
私の見る限り、世の中には善き人が多くいる。
幸いにも、たくさんの善き人に触れることが出来た人生を送ってきた。
壊れやすいのに、不器用だから自分をごまかせずに余計に世間に傷つく、
努力家で、自分に厳しく、孤独で、それなのに希望を捨てない人たち。
端的に言って、世界は彼らのためにあると思う。
独善的な人とかはどうでもいいんだ、彼ら邪悪な善人は、自己充足できる。
自己正当化はいつだってしているし、感謝しない人を恫喝することも出来るし、
自己欺瞞のシールドで自らの矛盾や孤独を覆い隠すことも出来るし、
それに気づかずに満足して一生を終えることも出来る。
それはいいんだ。
そうじゃなくて、善き人は守らなくちゃいけない。
彼らは使命があるから。
彼らの心が折れてしまわないように、不条理に疲れてしまわないように、
この本はきっと、助けになるだろうなと思った。
そして私は、そういう善き人の生が、きっと報われるように、
同類の馬鹿共をけん制し、同類の利己主義者を丸め込み、同類の悪意を消耗させるのだ。日々。せいぜい。
守らなくちゃいけないから。やっぱり。
まあ自分の為ですよ、自分の為ですけどねもちろん。
最後に、善き人じゃないバージョン(私)の訳もやってみるか。。単語わかんね。
- 1.大半の人間なんて非論理的で、道理もわきまえず、しかも自己中。まあでも、愛しなさい。
- 2.良いことをすればすぐ下心があるんだろうとか言うのばっかり。まあでも、やりなさい。
- 3.成功しても、寄って来るのは見せ掛けの友達と本当の敵。まあでも、成功しなさい。
- 4.良いことをしたって明日には忘れられてる。まあでも、良いことをしなさい。
- 5.誠実で率直だと無防備になる。まあでも、誠実で率直でいなさい。
- 6.最大の目的を持った最大の男女なのに、最小の目的を持った最小の男女に打ち落とされたりする。まあでも、大きくありなさい。
- 7.人々は弱者をえこひいきするけど、ついて行くのは強者のほう。まあでも、弱者のために戦いなさい。
- 8.あなたが何年もかかって築き上げたものが一晩で壊されたりする。まあでも、建てなさい。
- 9.人々が本当に助けを必要としてるのに、いざ助けると攻撃されるかもしれない。まあでも、助けなさい。
- 10.世界のために最善を尽くしても、単にひどい目にあっただけで終わるかもしれない。まあでも、最善を尽くしなさい。
そういうあなたを、私は見てるし、私は知ってるし、出来れば守るから。