旧 はてブついでに覚書。

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お代は見てのお帰りと過剰(潤沢)の経済学

去年の10月ごろに、id:umedamochioさんがエントリで、
クリス・アンダーソンロングテールという概念の提唱者だそう)の「The Economics of Abundance」という概念を紹介された。


私の大好きな、web2.0の流れだ。web性善説の流れだ。
一瞬にして私は舞い上がった。
英語よくわからないながらもとりあえず雰囲気で舞い上がった。
(以下主に梅田さんが引用された場所を分からないところスルーの超訳&テンション高めでお送りいたします勘違い多発の可能性有)

don't do one thing, do it all; don't sell one piece of content, sell it all; don't store one piece of data, store it all.


小出しにすんなよ、全部がつんと行っちゃえよ!
Yeah!(←雰囲気)

The Long Tail - Wired Blogs


えっと、手っ取り早いのはこちらのご本人のパワポデータが英語ながらビジュアルだけでも大変分かり易うございます是非。

プレゼンテーションをダウンロードして、

http://www.ethanzuckerman.com/blog/?p=1060

の解説を一緒に読むと何が話されたかよくわかる。

The Economics of Abundance - My Life Between Silicon Valley and Japan

・・よくわかる前に英語がよく分かるかって問題もありますがそこは雰囲気、、

ちと抜粋

  • In the past, we built business cases based on ROI. Now we build it and build the business afterwards.
  • In the past, “everything is forbidden unless it’s permitted.” Now everything is permitted unless forbidden.
  • Scarcity is about paternalism, a decision that an editor knows what’s best. Abundance is about egalitarianism.
  • Scarcity is top-down, abundance is bottom-up. Instead of command and control, it’s out of control.
  • 昔は、投資の回収率に基づいてビジネスを立ち上げてた。でも今はがんがん立ち上げちゃえばいい。
  • 昔は全てが隠れていて、許可されたものだけ表に出てきてた。でも今は、全てが、隠されることなく許可されてる。
  • 欠乏というのは、パターナリズム(家父長主義)、何がベストなのかは編集者が知ってる、っていう決定のことだ。過剰(潤沢)というのは、平等主義だ。
  • 欠乏はトップダウン、過剰はボトムアップ。それは命令と制御の代わりに、制御不能だ。
An abundance of Chris Anderson | … My heart’s in Accra



個人的な理解だと
今までは”物には限りがありまして”という、希少性やそこにかけられたコストをを価値に商売をしていたんだけど、
技術の進歩によりネットの帯域とストレージのコストがどんどんゼロに近づいている今、
そうじゃなくて、玉も石も出す側で選り好みしないで全部出しちゃって、消費者がそこから選んでくれる方法でいいんじゃない?という方向へ変わっている、という話だと思う。


The Economy of Scarcity is a zero sum game -- new offerings necessarily replace old. Take, for example, Blockbuster. With DVD choices limited to the inventory that fits on the store shelves, the arrival of each new release necessarily displaces some DVD that the day before was available for rent. In contrast, Netflix has no shelf space limitations, thus the arrival of new releases need not replace the old.


今までのけちけちした経済だとさ、ゼロサムっていうか。
リアル物件(DVDとか)は売り場の棚のスペースに制約を受けるから新しいのが入ったら古いのどけなきゃならないじゃん?
でもネットならそんな制約もうないんだから選り好みしないで全部置いとけばいいよね。

http://p6.hostingprod.com/@www.ventureblog.com/articles/indiv/2006/001260.html

The Economy of Abundance allows business owners to defer choices to the end users. What better way to find out what consumers want than to give them everything and see what they actually buy.


もう、ユーザーに委ねちゃえるのが過剰の経済。
なんせ全部並べられるんだから、事前に与えるものを売る側が選別するんじゃなくて、
すべての選択肢を客が見て自分で選べる。
お客がほしいものを提供するのに、お客自身に選ばせる以上にいい方法なんてある?

http://p6.hostingprod.com/@www.ventureblog.com/articles/indiv/2006/001260.html

Much like the Long Tail, the idea of the Economy of Abundance is not prescriptive. It does not tell you how to run your business. But it points to another significant force at work in the new economy and suggests that entrepreneurs should think creatively about how their businesses might be transformed by utilizing abundant resources in a disruptive way.


この「過剰の経済学」っていう概念は「ロングテール」と同様、だから何どうしろって指針を示してくれるわけじゃないし、
何かビジネスプランを教えてくれるわけでもない。
でもこの概念は、来るべき新しい経済の中で働くことに関してまた一つの大きな力学を示唆してる。そして、これからの企業家は、こういった潤沢なリソースを使って、どんな破壊的な方法でビジネスを組み立てるのかっていう創造性を問われてる。

http://p6.hostingprod.com/@www.ventureblog.com/articles/indiv/2006/001260.html


私みたいなのは、油断するとすぐ夢見がちなので、いろいろと妄想が膨らむ。
感覚としては、この方に近い。

When I sat down in my first economics class at UCLA, the professor wrote on the blackboard all we would learn, in really big letters:

SCARCITY

I've been blogging for five years as of this month, and here's what I've learned:

ABUNDANCE

I have discovered I have a lot to give. And when I give, I notice others give more. Some of them I've formed relationships with, and trust opens giving, but I have also learned to trust strangers to share in abundance.


UCLAでの始めての経済学の授業で、私達がこれから学ぶことについて、教授は黒板に大きくこう書いた。

  欠乏

でも5年もブログ書いて私が学んだことはこうだ。

  潤沢


私は自分が与えられるものがたくさんあるってことを発見した。しかも気づいたんだけど、自分が与えれば与えるほど他人がもっと与えてくれるんだよね。そのうち数人はもともと信頼関係があったから与えることが出来たんだけど、それだけじゃなくて、よく知らない人とでも、この潤沢さの中で、信用しシェアしあうことを学んだ。

Abundance, and Five Years of Blogging - Ross Mayfield's Weblog

So much of this is about how we envision the future. Not in the grand sense that the rules are changing. But when two or more people can believe in an opportunity, they can share cost and risk to get there together, in the process reduce them -- and learn so they and others can build upon it.


この概念について未来を思い描くことは尽きない。
このルールの変化は大きな流れじゃない。でも、たとえば2人、もしくはそれより多くの人がこの可能性を信じることが出来たなら、
みんなでコストとリスクをシェアして、その負担を少なくしていくことが出来る。
そしてその上に、多くのものを生み出していけることを学ぶんだ。

Abundance, and Five Years of Blogging - Ross Mayfield's Weblog


・・私のweb2.0のイメージは、前書いたんだけど、

まあ、お互い信頼しあってオープンにいけばご機嫌スパイラルだよね、っていう楽観主義。
楽観主義というより、その、現実を作り出す「信じる母体」に自分がなりたい、という感じ。
だから、こういう太っ腹な話が好き。


それと、何度かブログに書いてる気もするけれど、いろいろな状況の国がある中で、
とりあえず、日本の、私達の多くはもう充分にモノを持ってる。
それどころか、もっぱら何を捨てるか、整理するのかで頭を悩ます贅沢ぶり。
そんな中で「今までの経済」をやるということは、もうモノを充分持っている人に対して
「まだ私はモノを持っていない」「あれを手にしてないなんて!」
という欲を起こさせるということだ。
作られた希少性、作られた格差。
消費者が衣食足りて礼節を知ってしまわないよう、足るを知ってしまわないよう、
「まだ衣食足りてない」と思わされることによって成り立つ。


私にはその方法が未来永劫続いていくとは思えない。
今、消費を繰り返すことが人生の充実と勘違いしている人が大量にいるけれど、
私も消費は大好きだけど、
でも、本当に必要なモノは思うよりもっと少なく、後は全部虚構。
そして私達は、本当に必要な時間を虚構の消費で浪費し続けてる。


だから、この「過剰の経済学」、モノが元々潤沢にあるということを起点にした商売の方法に希望を持つ。
私達が冷静に、自分に本当に必要なものを選ぶことが出来る場所。


web2.0でまず商売が危うくなっているのが「文章」の世界だけれど、
逆に言うと、この過剰の経済を試す一番最初の機会だと思う。


今、多くの、それこそ過剰な文章がウェブにあふれてる。無料で。
昔は、新聞にせよ本にせよ、全部を読む前に対価を払っていた。
車に乗ってみる前に、携帯電話を使ってみる前に代金を払うように。


読む前に払う習慣が付いていた私達は、
払わなくても読める多くの有益な文章に出会った時、
それを”タダ”だと解釈し、熱狂した。
それはその通りだ。


ただ、この熱狂が通り過ぎ、私達が文章の摂取について足るを知った時、
私達は、出版社が先に決め打ちしてきた「価値」(価格)を先払いするのではなく、
先にその文章を読み、そこに”自分で”価値を感じ、”自分で”価格を決め、払う行動が出来るようにはならないだろうか。


今でも有料メルマガや会員サイトはあるけれど、
それらは基本的に文章が提供される前に先払いされる、旧来の方法だ。


そうじゃなくて、先に文章を読み、価値を感じ、その文章に対して支払いをすること。
その作家がその先も書き続けられるように。
そして作家達も、今(過渡期)の”無料じゃなきゃ読まない”というプレッシャーによって
やせ我慢させられることなく、
いいと思ったら支払いをお願いしたいと堂々と言う。
そういう感じ。。


前置きが長くなったけど(前置きだったんかよ)、
そんなこんなで、私はid:fuku33さんの、講義録公開&投げ銭募集を
支持してる。
すごくすがすがしい姿勢だと思う。
コストをかけ、オープンにし、そのシェアを募る。
すごくウェブ的だ。


別に新しい概念じゃないのかもしれない。
そう”お代は見てのお帰り”という昔からある方法。
(今やっている人もたくさんいる。)
人の善意に頼る方法。
人の尊厳に頼る方法。
人を信頼する方法。


楽観的過ぎるかもしれないけど、こういう方法がもっと増えたらと思う。
やれる分野では。
共済というか、ユニオンみたいなのを作ってもいいかなあ。
ウェブで質の高い文章を読めるように支援するネットワーク(組織)を作って、
みんなそこに任意で協賛し(会費を支払い)、代わりにポイントを受け取る。
作家や学者やジャーナリストがそこに登録して文章を公開し、
協賛した人たちはそれを自由に閲覧し、そのポイントを自分のジャッジに基づいて送る、とか。。
あ、RSSリーダーに登録したら○ポイントとか、そいういうnowaのノエワンっぽいのでもいいのかな。


この辺はシリコンバレーの誰か頭のいい人!!っていつもみたいに頼らなくても、文系やスーツががんばって開発できる領域なのかなあ。
ううむ。


追記:
池田先生によるちゃんとした展望